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飯守泰次郎監督による来シーズン演目説明会 [音楽]

去る1月28日に、新国立劇場オペラパレスにて飯守泰次郎オペラ芸術監督による、
16/17シーズン演目説明会が開催されました。

ざっと、要点をかいつまんでみたいと思います。
一部記憶を頼りに記載しておりますので、不正確な部分があるかもしれませんが、
何卒ご容赦いただければと思います。

【冒頭あいさつ】
・お客さんの方を向いて話すのは緊張する。
・演奏会の時はお客さんに背を向けて楽譜と音楽に逃げ込めるが、こういう場ではそれができない。

【シーズンテーマ】
・コントラスト(重たいオペラ⇔軽いオペラの対比を楽しめる)

【ラインの黄金振り返り】
・救済をテーマとした楽劇
・リハーサルは実に和やかでスムーズであった。
 楽劇の内容がドロドロしたものなので少し喧嘩ぐらいあってもよかったかもしれない。
・日本人キャストも検討してくれた。

【シュテファン・グールドについて】
・「ラインの黄金」のローゲは初役であった。
 キャラクター役で狂言回しでもあるこの役を見事に演じてくれた。
・ジークムント役も演奏会形式で一回演じたことがあるのみ。
・ライン4演目すべてに出演するのはヴィントガッセンも行っており、グールドも同じことを
 やってみたいと思っていたようである。

【リングの演出について】
・本当は自主製作したかったが経済的な理由で断念した。
・いわばゲッツ・フリードリヒの演出はセカンドチョイスではあったが、単に既存の演出を輸入し
 繰り返すのでは意味がない。極端な読み替え演出が主流となる現代において、音楽と演出
 が矛盾しない上演を取り上げる意味を問いたい。

【ルチアについて】
・ベルカントは1に声、2に声、3に声である。
・タイトルロールのオルガ・ペレチャッコは是非出演してほしいと思い、彼女の予定に新国の
 スケジュールを合わせる形で招へいした。
・指揮者のビザンティはペレチャッコとよく共演しており、今回もイタリアでリハをしてから来日
 してくれる。
・「狂乱の場」ではグラスハーモニカを使用する(飯守監督のこだわり)。
 グラスハーモニカはかつては人心を惑わす音を発するという理由で演奏禁止されたこともあり
 ドニゼッティもその辺りの事情もあってか導入を断念している。
 今回は作曲者の最初のイメージに近づけるためこの楽器を用いることにした。
 因みに、MET等でもこの楽器を用いている。

【レパートリー演目】
・単なる繰り返しにならないようにしなければならない。

【質疑応答】
Q:日本人作品がないのは?
A:単純に経済的な理由によるもの。芸術監督が踏み込めない領域であり断念せざるを得なかった。

Q:オーケストラの選定理由。座付きオケの構想は?
A:オーケストラ側から演奏したいという要望があり、新国立劇場側からもこのオーケストラに演奏して
  欲しいという要望があり、それらを総合的に加味した結果である。
A(事務局):座付きオケについては要望があることは承知している。

Q:「セビリアの理髪師」第二幕最後のアリア(通常カットされる)は歌う?
A:現在調整中であるが、今回のキャストであれば歌えると思っている。


飯守泰次郎次期オペラ監督による新シーズン演目説明会 [音楽]

新国立劇場へ飯守泰次郎次期オペラ監督による新シーズン演目説明会に行ってまいりました。
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飯守先生が新国立劇場オペラ監督に就任されることは前々から発表されているわけですが、
こうして具体的なイベントがあると、いよいよ「飯守体制」が動き出すのだな、とワクワクします。

「カルメン」の終演後、約1時間程度の予定でしたが、そこは飯守先生のことですから話し始め
ると止まりません。予想通り時間をオーバーし、質疑応答の時間はなくなってしまいました。

飯守先生のお話のなかから記憶に残った点を思いつくまま羅列いたします。

<飯守先生について>
ご承知のように齋藤秀雄先生に師事したのち、労音等で1年に51回椿姫を振るなどオペラと
不思議なゆかりがあり、さらに留学先のニューヨークでワーグナー家の目にとまり、バイロイト
で20年近くアシスタントを務めることになった。とても不思議な繋がりの連続で、今ここに
次期監督として立っている。

<新制作演目について>
・パルジファルは新国立劇場が唯一取り上げていないワーグナー作品であり、自分にとっても
とても思い入れのある作品であるため、初めての新国立劇場デビュー(笑)演目として選んだ。
古今東西から実力のある歌手を選ぶことができた。演出のクプファーも「その歌手なら引き受けよう」と言ってくれた。ただしその反面台所事情は大変だったと思う。

・マノン・レスコーは東日本大震災で上演中止となったプロダクションであり、是非とも日の目を
見せたかった。指揮者以外は震災当時のキャストをほぼ揃えることができたた。

・椿姫は演出のヴァンサン・ブサール氏が、洗練されつつも椿姫保守本流の演出を見せてくれる
ものと期待している。ブサール氏曰く「現代では伝統的な演出をすることは勇気がいる」とのこと。

<再演演目について>
・ドンジョヴァンニ:基本「どんな役でもそつなくこなす人」よりは「この役にはこの人しかいない」と
いう人をキャスティングしている。他演目も同様である。ただし、ドンジョヴァンニ役のアドリアン・
エレートだけは例外である。彼には「こうもり」でアイゼンシュタインも歌ってもらうが、それほど
彼は才能があるので例外としてキャスティングした。

・ドンカルロ、さまよえるオランダ人、こうもり、運命の力、沈黙は時間の都合でざっと流す感じで
した。あまり(筆者が)よく覚えていません。

最後に、監督から「オペラは継続していくことが大切。そして聴衆とコミュニケーションを取ることが
大事」とのお言葉ありました。飯守体制の新国立劇場がどうなっていくのか、とても楽しみです!


ワーグナープロジェクト名古屋「パルジファル」 [音楽]

ワーグナープロジェクト名古屋「パルジファル」が終演いたしました。

構想5年、準備に3年を費やし、アマチュアオーケストラと合唱団でパルジファル全曲を演奏しよう
というこのプロジェクト、Bassドラはコントラバス奏者として1年参加させてもらっただけなのですが、
大変大きな満足感に浸って終えることができました。


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練習の一コマ

オーケストラ練習は名古屋近郊のホールなどを借りて昨年11月から始められました。
はじめはオケだけの練習なので
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ジャン!・・・・・・・・・」
とか
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・テテテテン」
とか、
ピースのかけたパズルのような感じで、
なかなか全体像を把握することができませんでした。
写真のように合唱とソリストが入った練習は8月に入ってから集中的に行われました。
回を追うごとに音楽が組みあがっていく様は、演奏していて快感でした。
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本番当日の舞台の建込みの様子。演奏会形式でしたが、演出も取り入れられました。
舞台中央を開けて、ソリストたちの出入り口にします。
芸術文化センターコンサートホールの中央扉は
「開かずの扉」だと思っていたので、これが開いている光景を見られるだけで感激です。
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建込みが終了するとこんな感じになります。ソリストは舞台中央の通称「お立ち台」に、
合唱団はオルガン前のP席に陣取る形となります。
どうです!なかなかのものでしょう?

演奏会は15:30に開始され20:40頃終演いたしました。
体力が持つだろうかと心配しておりましたが、あっという間に過ぎてしまった感じです。

最後の和音が静かに消えて、会場全体の明かりが落とされ、しばらく静寂が続いたのち
「ブラボー!」とともに万雷の拍手でお客様が応えてくださいました。

色々コンサートには出させていただいておりますが、これほど幸せなカーテンコールは初めてでした。

終演後は大急ぎで舞台を片付け、市内のホテルで打ち上げです。
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挨拶をされる三澤先生。この後もたくさんのソリスト、スタッフの方の挨拶が続きました。
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ソリストと主要メンバーたちで記念撮影。感激のあまり涙ぐんでいる人も。

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翌日の読売新聞にはこのように演奏会のことが記事にして掲載されていました。
CBCテレビのニュースでも流れたとのことで、改めてビックプロジェクトだったのだと思い、
それに参加できたことが信じられない思いです。

三澤先生はじめご指導くださった皆様、
ソリストの皆様、
オーケストラ、コーラスの皆様、
裏方で支えてくださった皆様、
支えてくださったワーグナー協会の皆様、
そして何よりこの企画を立ち上げた愛知県警のお巡りさん、
すべての方に感謝申し上げます!

Vielen Dank!


小松一彦先生を悼む [音楽]

指揮者の小松一彦先生が3月30日にお亡くなりになりました。

私は名古屋ブルックナー管弦楽団で小松先生の指揮で、ブルックナーの交響曲8番、3番、0番
を演奏する機会がありました。私に限らず、アマチュアオーケストラで小松先生のお世話になった
方は多いのではないでしょうか。

事前に諸先輩方から「怖い先生だよ」と聞かされていたので、初めての練習の際は非常に緊張し
たのですが、いざ始まってみれば非常に優しく指導していただきました。もちろん、厳しく指導され
る場面もありましたが、それはそれで納得のいくものでした。

とにかく、ブルックナーに対する思い入れの強さ、そしてさらにその裏にあるワーグナーへの情熱
がひしひしと感じられました。おそらくワーグナーの楽劇も演奏したいとお思いだったのではないで
しょうか。

「ここはハーゲンがジークフリートを刺すように!」
「ブルックナーの交響曲はね、後期になるにつれて『トロみ』が出てくるんだよ。カレーみたいにね。」

今でも先生の言葉が思い出されます。

アマチュアオーケストラ、特に社会人オケの場合、仕事と掛け持ちなので、人が集まらなかったり、
同じ間違いを何度も繰り返したりで、指導する側に特別な忍耐を強いてしまいます。

「本番一ヶ月前になっても弾けないところは、自主的に諦める!そういう割り切りも大事!」
「(譜割が複雑でオケが止まった際に)楽譜に一言『反射神経!』と書いておきなさい!」

先生は、こんなユーモアあふれる表現で場を和ませてくださり、辛抱強く指導してくださいました。
享年65歳。これから円熟期に入ろうかという矢先でのご逝去に、ただただ残念としか申し上げる
言葉が見つかりません。

安らかにお休みください。
合掌。


日本フィル特別演奏会上岡敏之プロジェクト [音楽]

今日は一転寒い日になりました。午後からオペラシティへ日本フィル特別演奏会を聞いて参りました。

指揮 上岡敏之さん
ヴァイオリン 郷古廉さん

<曲目>
ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番
シュトラウス アルプス交響曲
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上岡さんのオケから分厚い響きを引き出した「アルプス交響曲」もすばらしかったですが、ヴァイオリン
コンチェルトの郷古さんの独奏が、実に堂々としてオケとの息もぴったりと合っており、非常に驚きました。
日本の若手でこんな凄い人がいるのか、と感心したしだい。

やはり、音楽の裾野は確実に広がっていっていますね。


都響 プロムナードコンサートNo.352 [音楽]

うららかな一日。東京では桜が開花したそうで、春はすぐそこだと感じます。

サントリーホールへ都響プロムナードコンサートを聴いてまいりました。

指揮:アンドリュ・リットンさん
ピアノ:山下洋輔さん

<曲目>
バーバー:弦楽のためのアダージョ (故デプリースト氏への追悼演奏)
ガーシュウィン:パリのアメリカ人
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー*
バーンスタイン:「キャンディード」序曲
バーンスタイン:「ウェスト・サイド・ストーリー」より〈シンフォニック・ダンス〉
バーンスタイン:「ディヴェルティメント」より「ワルツ」(アンコール)

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オールアメリカンプログラムと言う、うららかな春の日にはちょうどよいポップな感じの
コンサートでした。

山下さんのラプソディー・イン・ブルーは、ジャズピアニストならではの即興と独特のテンポ
でいつもとは違う新鮮なラプソディーを楽しむことができました。

バーンスタインの一連の曲もとても勢いがあって胸がすくような演奏でした。

関西フィルハーモニー管弦楽団 第245回定期 [音楽]

最近Facebookばかりやっていたせいか、ブログの更新をサボりにサボり、とうとうスポンサー広告
がトップページに出るようになってしまいました。

心を入れ替えて(?)細々とでも更新を再開しようと思います。

さて、大阪まで遠征して関西フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会を聞いてまいりました。

指揮:飯守泰次郎さん
ピアノ:小菅優さん

<曲目>
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
ブルックナー:交響曲第3番 ニ短調(1873年 初稿)

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ピアノ協奏曲は小菅さんと飯守先生、オーケストラの息がぴたりと合った安定感抜群の演奏。
ブルックナーも初稿(一般的な第3稿より長い)を使用しての演奏でしたが、間延びすることなく
集中力の高い素晴らしい演奏でした。
飯守先生はこれから10年かけてツィクルスを完成させるとの事。これは楽しみです。

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開演前は国立国際美術館でさまざまな映像作品を堪能。
遊園地のジェットコースターのような外観ですが、れっきとした美術館です。

庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリ デュオ・リサイタル [音楽]

大分涼しくなりましたが、日中はまだ汗ばむ陽気が続きます。

彩の国さいたま芸術劇場へ庄司紗矢香さん&ジャンルカ・カシオーリさん デュオ・リサイタルを
聞いてまいりました。

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<曲目>
ヤナーチェク: ヴァイオリン・ソナタ
ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ第10番 ト長調 作品96
ドビュッシー: ヴァイオリン・ソナタ ト短調
シューマン: ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ短調 作品121


アンコール
J.S.バッハ:音楽の捧げ物より第4曲
シュニトケ:古典様式による組曲第5番

当初はオールベートーヴェンプログラムを予定していたとのことですが、都合により上記のよう
なプログラムになったとのことです。事情はわかりませんが、これはこれでヴァラエティに富ん
だ面白いプログラムでした。特にヤナーチェクは初めて聞く曲でしたが、とても面白い曲でした。
ヤナーチェクは日本でもっと演奏頻度が上がってほしいですね。

カシオーリさんのやわらかいピアノ伴奏の上に、庄司さんのヴァイオリンの音色がふんわりと
溶け合い、ピアノとヴァイオリンの二重奏を十分に楽しむことができました。
昔庄司さんを聞いたときは、かなり馬力と勢いのある演奏が印象に残っているのですが、
今日は非常に繊細で細やかな表現がされていました。
庄司さんの進境は著しいものがありますね。これからも期待です。


都響 マーラーツィクルス第2回 [音楽]

台風接近中ですが、横浜みなとみらいまで、都響マーラーツィクルス第2回を聞いて参りました。

指揮:エリアフ・インバルさん
ソプラノ:澤畑恵美さん
メゾソプラノ:竹本節子さん

マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」

第1回が個人的に今ひとつな印象だったので少々不安な気持ちで出かけましたが、大変にすばらし
い演奏で不安感は一気に吹き飛びました。

みなとみらいホールは音が遠くで鳴っているような響きがしますが、マーラーのような大編成の曲で
はそれがよい方向に作用したと思います。どっしりとしたオーケストラのサウンドをホールの音響が
やわらかく包み込む感じで、とても耳当たりのよい演奏でした。

次回以降にも大いに期待です。

東京二期会「パルジファル」感想 [音楽]

東京二期会「パルジファル」全4公演が終了いたしました。

飯守泰次郎先生のファンであるBassドラにとって、この公演は秋のクラシック音楽シーズン最大
のイベントでした(シーズンは始まったばかりですが・・・)。
祭りが終わってしまった寂しさに浸りつつ、公演の感想をしたためたいと思います。

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まず、本公演成功の最大の功労者は、なんと言っても飯守泰次郎先生でしょう。
「飯守節」と名づけたくなるような、粘っこく、一フレーズずつライトモティーフ刻み込む演奏は、
速いテンポでサラリとしたワーグナー演奏の多い昨今、時流に対抗するような保守本流の演奏
といえましょう。

この、演奏者にとっては過酷とも思われる要求に見事に応えた、ソリスト、読売日本交響楽団、
東京二期会も、賞賛に値する貢献であったと思います。

特に今回は初日と二日目の間に中一日置いた以外は休みなしというハードなスケジュールで
体調維持だけでも大変なご苦労があったのではないかと推察します。

クラウス・グート氏の演出も、「パルジファル」本来の話の上に、氏独特のストーリーが平行して
展開する興味深いものでした。オペラのタイトルを「アンフォルタスとクリングゾル」と改題しても
よいほど、この二人に演出の焦点が当たっています。
逆にパルジファルの描写はいたって淡白で、ト書きに書かれている最低限の扱いしか受けません。

グート氏独特のストーリーが読み解けると結構楽しめる演出ですが、それまではかなり混乱する
演出です。尤も読み替え演出が主流のワーグナーにおいては、常に聴衆が付き合わされる
問題ですが。

舞台設定はおそらく第一次大戦~第二次大戦ごろのドイツで、帝政が崩れ市民階級が勃興し、
最後はナチズムを生み出すに至る時代です。新たな支配者を求めて彷徨う兵士と一時的な享楽
に耽る市民。そして支配されることを望む彼らが選んだのはファシズムでした。

こういうヨーロッパの歴史への強い反省意識は感心しつつも、さすがにそろそろ過去の呪縛から
自由になっても良いようにも思います。


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